秋は夕暮れ、柿美味し
秋の空を見上げ、雲一つ無いことを確認する。
そして大きく息を吸い込む。
それだけで体が一気に洗われる気がする。
冬に近づきつつあるひんやりとした空気は心身のわだかまった不廃物を綺麗に掃除する。
と、思ったのは少なからずこの秋の美しさに気がついてからだ。
たまにはぐれたようにぽつりと浮かぶ雲にさえ美を感じてしまう。
そして葉が赤く染まり、夕暮れの太陽に負けないくらいに赤い柿。
一つ枝から取る。
簡単に服で拭き、歯を実に刺す。
歯が差し込まれたところから、柿独特の甘い蜜がじゅわっと出てくる。
更に奥深くまで歯を進めると、今度は柔らかい果肉が舌にあたる。
そして最後には何とも言えない美味しさが味覚を支配する。
毎年、食べるが今年も甘く美味しい。
全て食べ終えてへたと芯だけ残った柿を草むらに投げる。
かさり。
その音はまるでもうすぐ来る冬の足音のように聞こえる。
かさり。
かさり。
かさり。
一歩ずつ冬近づき、秋遠のく。
夕暮れ色に染まる空。
肌寒くなる空気。
まだもうしばらく柿を味わいたい。